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∫ 量子力学の行列形式 (3)

前回は、演算子を行列として表示するところまで書きましたが、
今回は、ようやく、対角化の話までもっていけそうです。
シリーズ物は、たいてい途中で放置される傾向が強いので、
今回は、頑張ったかも!(笑)


ハミルトニアンを2種類の基底を用いて、行列表示することを考える。

一つ目は、ハミルトニアン自身の固有状態 |k> を基底に取った場合。
\[
H_{kl} = \langle k | H | l \rangle
\tag{1}
\]
二つ目は、別の演算子Ωの固有状態 |μ> を基底に取った場合。
\[
H'_{\mu\nu} = \langle \mu | H | \nu \rangle
\tag{2}
\]

演算子としては同じものであるが、単に行列として見たときには、
別の行列になるので、区別するためにプライム( ' )をつけた。

前回の議論からわかるとおり、
(1)は対角型となるが、(2)は一般には、対角型ではない。

基底を変換することによって、(2)から(1)の表示へ持っていければ、
数学的には、行列の対角化と同じ操作をしていることになる。

さらに、正規直交基底から別の正規直交基底への変換なので、
内積・ノルムを不変にするユニタリ変換である。
つまり、エルミート行列のユニタリ変換による対角化を行っていることになる。

このことをはっきりさせるために、もう少し詳しく考察してみる。

対角型になっていない(2)からスタートすることにして、基底の変換を考える。
基底 |ν> を 基底 |k> を使って表す。
基底は、どちらも完全系をなしていると仮定しているので、
\[
|\nu \rangle = \sum_k a_k |k \rangle
\tag{3}
\]
のように展開形で書ける。

|k>の系列の一つの基底 |l> との内積を取ると、
\[
\langle l | \nu \rangle
= \sum_k a_k \langle l | k \rangle
= \sum_k a_k \delta_{kl}
= a_l
\]
となるから、係数 al は、
\[
a_l = \langle l | \nu \rangle
\]
と書けることが分かる。これを(3)に用いると、
\[
|\nu \rangle = \sum_l | l \rangle \langle l | \nu \rangle
\]

| l >< l | のように2回以上出てくる文字について、面倒なので、
Σlを省略する記法が存在して、それを適用すると、
\[
|\nu \rangle = | l \rangle \langle l | \nu \rangle
\tag{4}
\]
と書ける。
これをじっくりと観察すると、
\[
| l \rangle \langle l | = 1
\tag{5}
\]
(1は恒等演算子)となっていることが分かる。

全く同様に、<μ| についても、
\[
\langle \mu | = \langle \mu | k \rangle \langle k |
\tag{6}
\]
と出来ることが分かるので、(4)と(6)を(2)に代入すると、
\[
H'_{\mu\nu} = \langle \mu | k \rangle \langle k | H | l \rangle \langle l | \nu \rangle
\]
と書ける。
同じ式を次のように見ると、
やっていることは、単純に恒等演算子 | k >< k |と| l >< l |を挿入しているだけである。
(恒等演算子だから、式を変えないのは当たり前)
\[
H'_{\mu\nu} = \langle \mu \underline{| k \rangle \langle k |} H \underline{| l \rangle \langle l |} \nu \rangle
\]

ところで、中央に対角型(1)の Hkl が現れたのに気づく。

ここで、
\[
\langle \mu | k \rangle = U_{\mu k}
\]
という成分を持つ行列 U を定義。
\[
\langle l | \nu \rangle = \langle \nu | l \rangle^* = U^\dagger_{l\nu}
\]
より、
\[
H'_{\mu\nu} = \sum_k \sum_l U_{\mu k} H_{kl} U^\dagger_{l\nu}
\]
と書き表すことができて、結局、これは行列の積として、
\[
H' = UHU^\dagger
\]
と書くことができる。

Uがユニタリ行列であることを確認するには、
(5)の恒等演算子の性質を利用して、
\[
( UU^\dagger )_{\mu\nu}
= \langle \mu | k \rangle \langle k | \nu \rangle
= \langle \mu | \nu \rangle
= \delta_{\mu\nu}
\]
\[
(U^\dagger U)_{kl}
= \langle k | \mu \rangle \langle \mu | l \rangle
= \langle k | l \rangle
= \delta_{kl}
\]
となり、 
\[
UU^\dagger = U^\dagger U = E
\]

行列が有限次元の場合は、片方でよいが、
無限次元の場合は、両方を確認する必要がある。

というわけで、\(U^\dagger = U^{-1} \) なので、
\[
U^\dagger H' U = H
\]
となり、
エルミート行列 H'をユニタリ変換 U によって、対角化する操作と同じである
ことが確認できた。

以上で、このシリーズは終了の予定です。
教科書をまる写ししているわけではなく、
自分で論理を再構成して書いているので、
間違ってるかもしれません!要注意です(汗)
物理>量子力学 | コメント(0) | 2011/04/20 12:57

∫ 量子力学の行列形式 (2)

前回は、状態ベクトルを適当な基底を使って、成分表示しましたが、
今度は、演算子の成分表示について、考えてみます。

演算子は、ベクトルに作用するので、成分表示した場合には行列となる。
つまり、それらの成分は、行列の要素となる。

たとえば、ある演算子Aに対して、
ハミルトニアンの固有状態 |k>を基底に取った場合の行列要素はどうなるか?

第 k 行第 l 列の行列要素 Akl は、
\[
A_{kl} = \langle k | A | l \rangle
\]
と表せる。

ここで、<α|β> は、ベクトル的な内積を表し、
上の式は、Aを |l> に作用させた後、|k> との内積を取るという意味。
\[
\begin{array}{lll}
& \downarrow k & \\
|k\rangle = ( 0, 0, \cdots, 0, & 1, & 0, \cdots )^T
\end{array}
\]
\[
\begin{array}{lll}
& \downarrow l & \\
|l\rangle = ( 0, 0, \cdots, 0, & 1, & 0, \cdots )^T
\end{array}
\]
ということを思い出して、
実際に < k | A | l > を行列計算してやると、
Akl という成分だけが取り出されることが容易にわかる。

これらの要素を全部並べれば、行列となり、演算子の成分表示ができた。

同じようにして、ハミルトニアン演算子Hの成分表示をしてみると、
\[
H_{kl} = \langle k | H | l \rangle
\]
となる。

ところが、|l> はHの固有ベクトルだったから、
\[
H | l \rangle = E_l | l \rangle
\]
なので、
\[
H_{kl} = E_l \langle k | l \rangle = E_l \delta_{kl}
\]
となり、Hは対角成分のみだけが値を持つ対角型行列となる。

以上の考察からわかること。

ある演算子の成分表示である行列は、
その演算子自身の固有状態を基底に取った場合は、対角型となる!


ハミルトニアンの行列は、エネルギー固有状態を基底に取った場合は、対角型となる。

やっと、対角行列が出てきたので、今回はこの辺で。
物理>量子力学 | コメント(2) | 2011/04/19 12:46

∫ 量子力学の行列形式 (1)

せっかく、対角化の記事を書いたところなので、
量子力学でどう使うかについてまで、
まとめておこうかなと思ったのですが、
意外にどう書いたらいいか難しいですね!

※この記事は、シッフの「量子力学」を参考にしています。


量子力学的状態は、抽象的なベクトルで表現できる。

Diracが考案したブラケット記法を用いることにして、
たとえば、ある状態αをベクトルとして、|α>と表す。
(このベクトルを「ケット」と呼ぶ)

ハミルトニアンHの固有値Ekに対する固有状態を |k> と書くことにすると、
\[
H |k\rangle = E_k |k\rangle
\]

Hはエルミートだから、|k> を正規直交基底とすることができ、
完全系であれば、任意の状態αを次のように展開することができる。
\[
|\alpha\rangle = \sum_k a_k |k\rangle
\]

この展開係数を並べると、成分表示になり、ベクトルっぽく見えてくる。
\[
|\alpha\rangle = (a_1, a_2, \cdots, a_k, \cdots)^T
\]

同じように、|k>をこの成分表示で表すと、
\[
\begin{array}{lll}
& \downarrow k & \\
|k\rangle = ( 0, 0, \cdots, 0, & 1, & 0, \cdots )^T
\end{array}
\]
という風に、k番目だけが1になった単位ベクトルである。

ところで、正規直交基底の取り方なんて、他にもいくらでもありうるから、
これ以外の成分表示で表すことも出来る。

たとえば、ハミルトニアン以外の別のある物理量演算子Ωの
固有状態を基底にとることを考える。
固有値をωμに対する固有状態を|μ> と書くと、
\[
\Omega |\mu\rangle = \omega_\mu |\mu\rangle
\]

物理量演算子なので、エルミートだとすると、
やはり、正規直交基底とすることができて、
完全性を仮定すると、状態αを
\[
|\alpha\rangle = \sum_\mu b_\mu |\mu\rangle
\]
のようにも展開することができる。

同様に、成分表示にすると、
\[
|\alpha\rangle = (b_1, b_2, \cdots, b_\mu, \cdots )^T
\]

今度は、基底自体を成分表示すると、|k>の時と同様に、
\[
\begin{array}{lll}
& \downarrow \mu & \\
|\mu\rangle = ( 0, 0, \cdots, 0, & 1, & 0, \cdots )^T
\end{array}
\]

この|μ> を基底に取った表示では、
もはや、|k> は先ほどのようにきれいな形では表せない。
(すべての成分に値を持つことになる)

まだ対角化はでてきませんが、とりあえず、今回はここまで。
物理>量子力学 | コメント(0) | 2011/04/18 22:26

∫ 高校物理のバイブル

今日は、僕が高校の時に出会って、すごく感銘を受けた
高校物理のバイブルとも言うべき不朽の名著をご紹介します。

駿台予備校講師、山本義隆先生の「物理入門」!

今はだいぶ版が変わって、「新・物理入門」になっているようです。
書店でなかなか見つけられないので、中身が当時と変わってないか確認できません。
おそらくそんなに大きくは変わってないことと思いますが。
現在、アマゾンでは中古しか買えないようですが、駿台文庫から買えるようです。

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受験テクニックに偏重した解き方重視の参考書と違って、
物理の本質的な骨格の部分に重きを置いて書かれているのが特長。

その意味では、物理に興味のない人にとっては、
無駄にハイレベルと感じてしまうかもしれませんが、
大学で物理を志そうと思っている高校生にとっては、
これを読んでいるか読んでいないかで
大学初年度の授業の理解度が大きく変わってくることでしょう。

大きな違いは、基本的に微分積分を容赦なく使っていること。
高校物理の教科書では、微分積分をいっさい使わずに説明していますが、
これは通常、微分積分が高校3年の数学で習うのに対し、
物理を前倒しで教えるためには、そうせざるをえないという事情があります。

しかし、敢えて言うならば、
微分積分を使わずして、物理を理解するというのが、そもそも無理な話。
(科学読み物的な理解なら、別ですが・・・)
その結果、ごまかしを入れて強引に誘導するか、
論理の順序を意図的に反転させて、微分積分を回避するか、
天下り的に式を羅列するという状態になってしまっています。

そもそも、物理に興味を持つ人種というのは、
厳格な論理性を好む人(つまり、理屈っぽい人・・・笑)なわけで、
ごまかしで説明されたのでは、興味を持とうにも持てなくなってしまいます。

この本は、あえてそのタブーを犯して(タブーかどうかは知りませんが・・・)
微分積分をバリバリ使うことによって、
本来の物理学の論理性を保ったまま、書かれているので、
多少ハードルは高いですが、
本当の意味で物理を理解したい人にとって、
これほどよい参考書はありません!


もちろん、微分積分のことだけでなく、
山本義隆先生の才によるところも大きいです。
大学の教科書は、当然、微分積分など数学を駆使して書かれていますが、
この本の驚くべきことは、高校の範囲の数学のみで記述されていること。
高校数学をきっちりマスターしていれば、必ず、読めます!

僕が高校時代にこの本に出会えたのは、ほんとに幸運だったと思います。
この本と出会ったきっかけは、
熱力学で断熱変化を記述するポアソンの法則の導出が知りたかったこと。
PVγ = Const. という式ですが、
この式は、どんなにごまかしても、微分積分を使わずに導出するのは困難。
そこで、教科書では、苦肉の策で、「くわしい理論によると・・・」と書かれていたのです。
これで一気にモティベーションがダウン(笑)

せっかく、ここまで辛うじて一歩一歩理解しながら、
自力登頂を目指していたのに、
途中でエレベータに乗らざるを得なくなった気分といえば分かるでしょうか(笑)

そこで、この導出が載っている参考書はないかと探し回って、
唯一、見つけたのがこの本だったわけです。
しかも、導出は、わずかの3行です!(笑)
その時、微分積分の威力と必要性というものを思い知りました。
(たった3行の数式を「くわしい理論」と書かざるを得ない事情っていったい・・・)

そして、この本を即購入!
まだ、高2で微分積分は全く習ってませんでしたが、
この本が読みたい一心で短期集中で微分積分を独学で習得したのち、
この本を読みふけりました。

今、読んでもほんとにすばらしい内容です。
大学で物理を学びたい高校生はもちろん、
物理を始めたい社会人の方にもおすすめの書です!


こんな名著を書かれた山本義隆先生の授業、一度、受けてみたかったなあ。
物理>雑感 | コメント(0) | 2011/04/17 11:22

エルミート行列のユニタリ変換による対角化

なぜ、エルミート行列の対角化が重要か?

それは、エルミート行列は必ず、実数の固有値を持つため、
実測できる物理量の演算子は、エルミート行列で表されるから。
しかも、ユニタリ変換、すなわち正規直交性を不変にする基底の変換で
対角化できるのがポイント。

というわけで、このあたりを少し。。。
(勉強中の身なので、間違ってるかもしれません・・・)

まず、随伴行列とは、Aに対して、
\[
(x, Ay) = (A^\dagger x, y)
\]
となるような行列 $A^\dagger$ のこと。

具体的には、ベクトルの内積を行列の積として計算すると、
\[
(x, Ay) = x^{T*}(Ay) = (A^{T*}x)^{T*}y = (A^{T*}x, y)
\]
となるから、
\[
A^\dagger = A^{T*}
\]

すなわち、随伴行列は、転置して複素共役をとったものになる。

この随伴行列$A^\dagger$が自分自身Aと等しい、
自己随伴な行列をエルミート行列と呼ぶ。
式で書くと、
\[
A^\dagger = A
\]
自分の分身が自分自身みたいなイメージでしょうか?(笑)


エルミート行列ならば、
\[
(x, Ay) = (Ax, y)
\]
となり、そのままの形で、内積の右へ行ったり、左へ行ったり・・・
と、自由自在に活躍できるってわけですね!

ユニタリ変換とは、
変換しても内積を不変にするような変換のこと。
つまり、
\[
(Ux, Uy) = (x, y)
\]
となるような変換。
内積が不変だから、内積で定義されたノルムも不変。
よって、正規直交基底は、変換されても、正規直交基底になる。
複素空間上の軸が回転するイメージでしょうか?

さっきの随伴行列を使うと、
\[
(Ux, Uy) = (U^\dagger Ux, y)
\]
だから、
\[
U^\dagger U = E
\]
で、
\[
U^\dagger = U^{-1}
\]

以上が定義の話。
ここからは、Aを正則なエルミート行列として話を進めます。

固有値λi、固有ベクトル pi とすると、
\[
A p_i = \lambda_i p_i \hspace{2cm} (p_i \neq 0)
\]

正則性から、pi はn個あり、すべて線形独立。

\[
(p_i, Ap_i) = \lambda_i (p_i, p_i) = \lambda_i |p_i|^2
\]
\[
(Ap_i, p_i) = \lambda_i^* (p_i, p_i) = \lambda_i^* |p_i|^2
\]

エルミートならば、この2つは等しいはずなので、$p_i \neq 0$の仮定より、
\[
\lambda_i = \lambda_i^*
\]
すなわち、エルミート行列の固有値はすべて実数!

前回の固有値と対角化の話を使うと、
固有ベクトルを並べて、行列 P を作れば、
\[
P^{-1}AP = D
\]
と対角化できるが、
この固有ベクトルは、定数倍しても固有ベクトル。
なぜなら、
\[
A(\alpha p) = \alpha Ap = \alpha\lambda p = \lambda(\alpha p)
\]
というわけで、
固有ベクトルは、ノルムが1になるように、正規化できる。

また、固有値が異なる2つの固有ベクトル pi、pj を考えると、

\[
(p_i, Ap_j) = \lambda_j (p_i, p_j)
\]
\[
(Ap_i, p_j) = \lambda_i (p_i, p_j)
\]

エルミートなので、上の2つは等しいはず。
$\lambda_i \neq \lambda_j$という仮定から、
\[
(p_i, p_j) = 0
\]
となる。
異なる固有値に対する固有ベクトルは直交する。

固有値が等しい2つ以上の固有ベクトルがあると、
それらは直交するとは限らないが、
線形独立であるという仮定を置いたので、
シュミットの直交化法により、
直交した固有ベクトルを作ることが可能。

(線形結合が固有ベクトルとなるのは、上の定数倍と同様に証明可能)

以上を総合すると、
固有ベクトルとして、正規直交基底を作ることができる!

そこで、正規直交化した固有ベクトル ui を並べて、行列 U を作ると、行列
\[
U = ({\bf u}_1, {\bf u}_2, \cdots, {\bf u}_n)
\]
はユニタリ行列である。なぜなら、
\[
(U^\dagger U)_{ij} = ({\bf u}_i, {\bf u}_j) = \delta_{ij}
\]
となり、
\[
U^\dagger U = E
\]

結論として、
正則なエルミート行列は、ユニタリ変換で対角化できる!
\[
U^\dagger AU = D
\]

もっと簡単にまとめようと思ってたのですが・・・(汗)
数学>線形代数 | コメント(0) | 2011/04/14 22:31
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