相対論的運動方程式 (3)
前記事で予告した通り、
S' 系で静止している電荷に電場からローレンツ力が働いている状況を考えます。
ローレンツ力は、
\[
{\bf F}' = q{\bf E}'
\tag{1}
\]
であるから、4元力は、
\[
f'^\mu = F'^\mu = (0, q{\bf E}')
\tag{2}
\]
と書ける。
これを電磁場テンソルを用いて表すと(HL単位系)
\[
f'^\mu = qf'^{\mu 0}
\tag{3}
\]
同じ文字 f を使ってしまったので、少々ややこしいですが、
添え字が1つのものは、4元力、
添え字が2つのものは、電磁場テンソル
という分かりにくい仕様で恐縮です(汗)
さて、これを S 系に持っていくと、どうなるか。
両辺の f がともに、1階の反変ベクトルであれば、
プライム記号を除いて、f ' を f に変えるだけでOK!
つまり、
\[
f^\mu = qf^{\mu 0}
\tag{4}
\]
しかし、今回は、右辺の f は、2階の反変テンソル。
単純にプライムを除くだけだと、2回分ローレンツ逆変換の係数をかけちゃうことになって、
一回分余計にやりすぎることになるため、これではダメなんですね。
さらに、一回分、ローレンツ変換係数をかけて、戻してやる必要があります。
このことを念頭に置いたうえで、次のように考えてみます。
4元力ベクトルと電磁場テンソルのローレンツ変換の関係式
\[
f'^\mu = a^\mu{}_\nu f^\nu
\tag{5}
\]\[
f'^{\mu\lambda} = a^\mu{}_\nu a^\lambda{}_\rho f^{\nu\rho}
\]
を(3)式にぶちこんで、
\[
a^\mu{}_\nu f^\nu = a^\mu{}_\nu ( q a^0{}_\rho f^{\nu\rho})
\tag{6}
\]
ここで、両辺をローレンツ逆変換すると、\(a^\mu{}_\nu\)が消えて、
\[
f^\nu = q a^0{}_\rho f^{\nu\rho}
\tag{7}
\]
これが S 系から見た4元力の正体!
・・・と言ったって、これじゃなんのこっちゃ分からんですね~(笑)
空間成分に着目して、ν=1,2,3 の場合を考えてみます。
\[
f^1 = q \gamma E_x
\tag{8}
\]\[
f^2 = q (\gamma E_y - \gamma\beta B_z)
\]\[
f^3 = q (\gamma E_z + \gamma\beta B_y)
\]
3次元的にまとめると、
\[
{\bf f} = \gamma q \left( {\bf E} + \frac{\bf v}{c}\times{\bf B} \right)
\tag{9}
\]
こうやって見ると、分かりやすくなりました。
ニュートン力学的なローレンツ力は、
\[
{\bf F} = q \left( {\bf E} + \frac{\bf v}{c}\times{\bf B} \right)
\tag{10}
\]
と書けるから、4元力の空間成分は、ニュートン的な力と
\[
f^i = \gamma F^i
\tag{11}
\]
という関係で結ばれていることになります。
つまり、
4元力 = ニュートン的な力 × γ
という関係になっているわけです。
今回はローレンツ力に限って導き出した結果ですが、
この関係が一般的に成立すると仮定します。
というのは、実は、どの教科書に書いてるわけでもなくて(汗)、
内山先生の教科書に、
ローレンツ力の関係を思い出すと、一般にこう考えられるというようなことが
一行ほどでさらっと書かれてるだけなんですよね。
これ、結構、重要なポイントだと思うんですが・・・
とりあえず、この方針で進めていきます。
v=0 の時は、γ=1 ですから、静止系では、
「4元力はニュートン的な力に一致する」という要請も満たしています。
次回、この関係をもとに、
修正された相対論的運動方程式の意味を考えていきたいと思います。
参考文献
[1] 内山龍雄「相対性理論」(岩波物理テキストシリーズ)
S' 系で静止している電荷に電場からローレンツ力が働いている状況を考えます。
ローレンツ力は、
\[
{\bf F}' = q{\bf E}'
\tag{1}
\]
であるから、4元力は、
\[
f'^\mu = F'^\mu = (0, q{\bf E}')
\tag{2}
\]
と書ける。
これを電磁場テンソルを用いて表すと(HL単位系)
\[
f'^\mu = qf'^{\mu 0}
\tag{3}
\]
同じ文字 f を使ってしまったので、少々ややこしいですが、
添え字が1つのものは、4元力、
添え字が2つのものは、電磁場テンソル
という分かりにくい仕様で恐縮です(汗)
さて、これを S 系に持っていくと、どうなるか。
両辺の f がともに、1階の反変ベクトルであれば、
プライム記号を除いて、f ' を f に変えるだけでOK!
つまり、
\[
f^\mu = qf^{\mu 0}
\tag{4}
\]
しかし、今回は、右辺の f は、2階の反変テンソル。
単純にプライムを除くだけだと、2回分ローレンツ逆変換の係数をかけちゃうことになって、
一回分余計にやりすぎることになるため、これではダメなんですね。
さらに、一回分、ローレンツ変換係数をかけて、戻してやる必要があります。
このことを念頭に置いたうえで、次のように考えてみます。
4元力ベクトルと電磁場テンソルのローレンツ変換の関係式
\[
f'^\mu = a^\mu{}_\nu f^\nu
\tag{5}
\]\[
f'^{\mu\lambda} = a^\mu{}_\nu a^\lambda{}_\rho f^{\nu\rho}
\]
を(3)式にぶちこんで、
\[
a^\mu{}_\nu f^\nu = a^\mu{}_\nu ( q a^0{}_\rho f^{\nu\rho})
\tag{6}
\]
ここで、両辺をローレンツ逆変換すると、\(a^\mu{}_\nu\)が消えて、
\[
f^\nu = q a^0{}_\rho f^{\nu\rho}
\tag{7}
\]
これが S 系から見た4元力の正体!
・・・と言ったって、これじゃなんのこっちゃ分からんですね~(笑)
空間成分に着目して、ν=1,2,3 の場合を考えてみます。
\[
f^1 = q \gamma E_x
\tag{8}
\]\[
f^2 = q (\gamma E_y - \gamma\beta B_z)
\]\[
f^3 = q (\gamma E_z + \gamma\beta B_y)
\]
3次元的にまとめると、
\[
{\bf f} = \gamma q \left( {\bf E} + \frac{\bf v}{c}\times{\bf B} \right)
\tag{9}
\]
こうやって見ると、分かりやすくなりました。
ニュートン力学的なローレンツ力は、
\[
{\bf F} = q \left( {\bf E} + \frac{\bf v}{c}\times{\bf B} \right)
\tag{10}
\]
と書けるから、4元力の空間成分は、ニュートン的な力と
\[
f^i = \gamma F^i
\tag{11}
\]
という関係で結ばれていることになります。
つまり、
4元力 = ニュートン的な力 × γ
という関係になっているわけです。
今回はローレンツ力に限って導き出した結果ですが、
この関係が一般的に成立すると仮定します。
というのは、実は、どの教科書に書いてるわけでもなくて(汗)、
内山先生の教科書に、
ローレンツ力の関係を思い出すと、一般にこう考えられるというようなことが
一行ほどでさらっと書かれてるだけなんですよね。
これ、結構、重要なポイントだと思うんですが・・・
とりあえず、この方針で進めていきます。
v=0 の時は、γ=1 ですから、静止系では、
「4元力はニュートン的な力に一致する」という要請も満たしています。
次回、この関係をもとに、
修正された相対論的運動方程式の意味を考えていきたいと思います。
参考文献
[1] 内山龍雄「相対性理論」(岩波物理テキストシリーズ)
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