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電磁場の量子化再論 (1)

これまで、シッフ [1] に基づいて、電磁場の量子化を見てきました。
実はまだ終わったわけではないのですが、
ここまでの道のりが長すぎて、頭の中を整理したくなったので、
サクライ [2] を参考にして、もう一度辿りたいと思います。

シッフ [1] は初めの前提から非常に丁寧に議論を進めてくれるので、
どういう手続きを行っているのかが分かりやすく、
すごく有用でした。
他にこういう本を僕は知りません。

しかし、その反面、長くなりすぎたため、
自分がどの段階にいるのかを見失いつつあります。

そこで、再度、サクライ [2] に基づいて、最短コースを歩んでみて、
見通しを深めたいと思っています。

まずは、前提として、電荷と電流のない自由電磁場($j_\mu = 0$)を考える。
適当なゲージ変換によって、横波条件を満たし、かつ
スカラーポテンシャルがゼロとなるようにできる。
 輻射ゲージ (1)輻射ゲージ(2)
\[
\nabla \cdot {\bf A} = 0
\tag{1}
\]\[
\phi = A_0 = 0
\tag{2}
\]満たすべきマックスウェル方程式は\[
\nabla^2 {\bf A} - \frac{1}{c^2} \frac{\partial^2 {\bf A}}{\partial t^2} = 0
\tag{3}
\]
電磁場を以下のようにフーリエ展開する。\[
{\bf A}({\bf x}, t) = V^{-1/2} \sum_{\bf k} \sum_{\alpha=1,2} \epsilon_{k\alpha}
\left[
c_{k\alpha}(t) e^{i{\bf k}\cdot{\bf x}}
+ c^*_{k\alpha}(t) e^{-i{\bf k}\cdot{\bf x}}
\right]
\tag{4}
\]
波数 k は、一辺 $L = V^{1/3}$ の箱において周期的境界条件を満たすとする
($k_x,k_y,k_z = 2n\pi/L$)
また、 A の実数性を考慮している。
$\epsilon_{k\alpha}$ はk ベクトルに対して、2種類の直交する偏光方向の単位ベクトルを表し、
$(\epsilon_{k,1}, \epsilon_{k,2}, {\bf k}/|{\bf k}|)$ はそれぞれ直交し、右手系をなすものとする。
これにより、横波条件 (1) も自動的に満たされている。

波動方程式 (3) を満たすことから、\[
c(t) = c(0) e^{-i\omega t}
\tag{5}
\]となる。ただし、$\omega = c|{\bf k}|$。

この表式を用いて、ハミルトニアン\[
H = \frac{1}{2} {\Large \int} ({\bf E}^2 + {\bf B}^2 ) d^3x
\tag{6}
\]を計算したい。

当初、サクライ [2] に基づき、(4) 式をそのまま代入して、
ベクトル解析の公式を駆使しながら、計算を進めていましたが、
あらかじめ、E と B を計算しておいてからやった方がやりやすいと思うので、
ここからしばらくは我流です。

電場 E と磁場 B を以下の式により計算する。\[
{\bf E} = -\frac{1}{c} \frac{\partial {\bf A}}{\partial t}
\tag{7.1}
\]\[
{\bf B} = \nabla \times {\bf A}
\tag{7.2}
\]
電場は、\[
{\bf E} = iV^{-1/2} \sum_{k\alpha} \epsilon |{\bf k}|
[c e^{i{\bf k \cdot x}} - c^* e^{-i{\bf k \cdot x}} ]
\tag{8}
\]となる。ここで、$\epsilon_{k\alpha}$ を $\epsilon$、$c_{k\alpha}(t)$ を c と略記した(光速の c ではないので、注意)

また、磁場は\[
{\bf B} = V^{-1/2} \sum_{k\alpha} \left[
c \nabla\times (\epsilon e^{i{\bf k\cdot x}}) + c^* \nabla\times (\epsilon e^{-i{\bf k\cdot x}})
\right]
\tag{9}
\]となり、\[
{\bf B} = iV^{-1/2} \sum_{k\alpha} \left[
c e^{i{\bf k\cdot x}} ({\bf k}\times \epsilon) - c^* e^{-i{\bf k\cdot x}} ({\bf k}\times\epsilon)
\right] \\
= iV^{-1/2} \sum_{k\alpha} ({\bf k}\times \epsilon) \left[
c e^{i{\bf k\cdot x}} - c^* e^{-i{\bf k\cdot x}}
\right]
\tag{10}
\]となる。

ここからの計算である考え違いをしていて、思いっきり長考してしまったのですが、
それについては後ほど述べることにして、とりあえず、修正後の流れで計算を続けます。

まず、電場の方の項 $\int {\bf E}^2 d^3x$ を計算していく。\[
{\bf E}^2 = -V^{-1} \sum_{k\alpha} \sum_{k'\alpha'} \epsilon \epsilon' |{\bf k}| |{\bf k}'|
[c e^{i{\bf k\cdot x}} - c^* e^{-i{\bf k\cdot x}} ][c' e^{i{\bf k' \cdot x}} - c'^* e^{-i{\bf k' \cdot x}} ]
\tag{11}
\]ここで、プライム記号がついているものは、$k' \alpha'$ における量を表すものとする。

2項式の積の部分のみを展開すると、\[
cc' e^{i{\bf (k+k')\cdot x}} + c^*c'^* e^{-i{\bf (k+k') \cdot x}} - cc'^* e^{i{\bf (k-k')\cdot x}} - c^*c' e^{-i{\bf (k-k')\cdot x}}
\tag{12}
\]となる。

フーリエ基底の部分は、周期的境界条件の仮定より\[
V^{-1} \int e^{i({\bf k}-{\bf k}')\cdot {\bf x}} d^3x = \delta_{\bf kk'}
\tag{13}
\]となることに注意して、(12)を空間積分(さらに、$V^{-1}$を乗じる)すると、\[
cc' \delta_{\bf k,-k'}
+ c^*c'^* \delta_{\bf k,-k'}
- cc'^* \delta_{\bf kk'}
- c^*c' \delta_{\bf kk'}
\tag{14}
\]となる。

この式がゼロにならないのは、${\bf k} = \pm {\bf k'}$ の時のみであり、
このとき、$\omega = \omega'$ であることに注意して、
(11)を空間積分すると、\[
\int {\bf E}^2 d^3x
= \sum_k \sum_{\alpha\alpha'} |{\bf k}|^2 \times \\
[
2 \epsilon_{k\alpha} \epsilon_{k\alpha'} c_{k\alpha}^* c_{k\alpha'}
- \epsilon_{k\alpha} \epsilon_{-k,\alpha'} c_{k\alpha} c_{-k,\alpha'}
- \epsilon_{k\alpha} \epsilon_{-k,\alpha'} c^*_{k\alpha} c^*_{-k,\alpha'}
]
\tag{15}
\]となる。

同様に、磁場の項を計算する。\[
{\bf B}^2 = -V^{-1} \sum_{k\alpha} \sum_{k'\alpha'} ({\bf k}\times \epsilon)({\bf k'}\times \epsilon')
[c e^{i{\bf k\cdot x}} - c^* e^{-i{\bf k\cdot x}} ][c' e^{i{\bf k' \cdot x}} - c'^* e^{-i{\bf k' \cdot x}} ]
\tag{16}
\]空間積分については、電場の場合と全く同じであるが、
偏光モードαに関する直交性が自明でないことに注意して、\[
\int {\bf B}^2 d^3x
= \sum_k \sum_{\alpha\alpha'} ({\bf k}\times \epsilon)({\bf k}\times \epsilon') [
c_k^* c'_k + c_k c'^*_k + c_k c'_{-k} + c^*_k c'^*_{-k}
]
\tag{17}
\]となる。プライム記号はα' に関するものであるという意味。

ここで、[] の中の符号が違っていることに注意。
これは、${\bf k'} = -{\bf k}$ の場合に、${\bf k'}\times\epsilon' = -{\bf k}\times\epsilon'$ から出てくる
マイナスによって、符号が反転したためである。

外積の部分については、公式を用いて、\[
({\bf k}\times\epsilon) ({\bf k}\times \epsilon')
= ({\bf k}\cdot{\bf k})(\epsilon\cdot\epsilon') - ({\bf k}\cdot\epsilon')(\epsilon\cdot{\bf k})
= |{\bf k}|^2 (\epsilon\cdot\epsilon')
\tag{18}
\]となり、偏光モードαに関して直交性を示すことが確かめられる。
ここで、$\epsilon\cdot{\bf k} = 0$ の直交性を用いた。

以上から、磁場の項は、\[
\int {\bf B}^2 d^3x
= \sum_k \sum_{\alpha\alpha'} |{\bf k}|^2 \times \\
[
2 \epsilon_{k\alpha} \epsilon_{k\alpha'} c_{k\alpha}^* c_{k\alpha'}
+ \epsilon_{k\alpha} \epsilon_{-k,\alpha'} c_{k\alpha} c_{-k,\alpha'}
+ \epsilon_{k\alpha} \epsilon_{-k,\alpha'} c^*_{k\alpha} c^*_{-k,\alpha'}
]
\tag{19}
\]となる。

最後に、(15) と (19) の結果を統合し、$\epsilon_{k\alpha}\cdot\epsilon_{k\alpha'} = \delta_{\alpha\alpha'}$ の直交性を用いると、
ハミルトニアンの最終形

\[
H = \sum_{k\alpha} 2|{\bf k}|^2 c^*_{k\alpha} c_{k\alpha}
\tag{20}
\]

が得られる。

というわけで、ようやく、計算がうまくいきました・・・(汗)
たいして難しい計算じゃないはずなのに、思いっきりハマってしまいましたね^^;

どこでハマったかについては、いったん記事を分けて、
次の記事で書こうと思います。

参考文献
[1] シッフ 「量子力学」(下)
[2] J. J. Sakurai "Advanced Quantum Mechanics"
電磁場の量子化 | コメント(0) | 2016/01/11 22:13

電磁場の量子化 (10)

前回、a と a' という演算子を導入したので、
ハミルトニアン

\[
H = \sum_{k\lambda} \left[ c^2 p_{k\lambda} p^\dagger_{k\lambda} + k^2 q_{k\lambda} q^\dagger_{k\lambda} \right]
\tag{1}
\]

を a, a' で表す。

\[
q_{k\lambda}(t) = a_{k\lambda} e^{-i\omega t} + a'^\dagger_{k\lambda} e^{i\omega t}
\tag{2.1}
\]\[
p_{k\lambda}(t) = -\frac{i\omega}{c^2} a_{k\lambda} e^{-i\omega t}
+ \frac{i\omega}{c^2} a'^\dagger_{k\lambda} e^{i\omega t}
\tag{2.2}
\]

を代入する。まず、上記のエルミート共役は、\[
q^\dagger_{k\lambda}(t) = a^\dagger_{k\lambda} e^{i\omega t} + a'_{k\lambda} e^{-i\omega t}
\tag{3.1}
\]\[
p^\dagger_{k\lambda}(t) = \frac{i\omega}{c^2} a^\dagger_{k\lambda} e^{i\omega t}
- \frac{i\omega}{c^2} a'_{k\lambda} e^{-i\omega t}
\tag{3.2}
\]となる。以降は、面倒なので、kλの添え字を省略することにする。\[
qq^\dagger = aa^\dagger + a'^\dagger a' + aa' e^{-2i\omega t} + a'^\dagger a^\dagger e^{2i\omega t}
\tag{4}
\]\[
pp^\dagger = \frac{k^2}{c^2} \left[
aa^\dagger + a'^\dagger a' - aa' e^{-2i\omega t} - a'^\dagger a^\dagger e^{2i\omega t}
\right]
\tag{5}
\] これらを (1) に代入すると、\[
H = \sum_{k\lambda} 2k^2 \left[
a_{k\lambda} a^\dagger_{k\lambda} + a'^\dagger_{k\lambda} a'_{k\lambda}
\tag{6}
\right]
\]となる。\[
N_{k\lambda} = \frac{2k}{\hbar c} a^\dagger_{k\lambda} a_{k\lambda}
\tag{7.1}
\]\[
N'_{k\lambda} = \frac{2k}{\hbar c} a'^\dagger_{k\lambda} a'_{k\lambda}
\tag{7.2}
\]とおくと、交換関係\[
[a_{k\lambda}, a^\dagger_{k\lambda}] = \frac{\hbar c}{2k}
\tag{8}
\]にも注意して、ハミルトニアンは\[
H = \sum_{k\lambda} \hbar\omega (N_{k\lambda} + N'_{k\lambda} + 1)
\tag{9}
\]と表される。
もともとの a と a' の定義 (2.1) (2.2) を見ると、\[
a'_{k\lambda} = a_{-k\lambda}
\tag{10.1}
\]\[
N'_{k\lambda} = N_{-k\lambda}
\tag{10.2}
\]とみなしてよいことが分かる。
もともと、k の和は半空間で取っていたから、N と N' を合わせて、
k の和は k 空間全体で取ると約束すると、ハミルトニアンは

\[
H = \sum_{k\lambda} \hbar\omega \left( N_{k\lambda} + \frac{1}{2} \right)
\tag{11}
\]

と表せる。

というわけで、ようやく光子描像っぽいハミルトニアンまで到達しました。

参考文献
[1] シッフ 「量子力学」(下)
電磁場の量子化 | コメント(0) | 2015/12/10 07:00

電磁場の量子化 (9)

ハミルトニアン

\[
H = \sum_{k\lambda} \left[ c^2 p_{k\lambda} p^\dagger_{k\lambda} + k^2 q_{k\lambda} q^\dagger_{k\lambda} \right]
\tag{1}
\]

と p, q の交換関係

\[
[q_{k\lambda}(t), p_{k'\lambda'}^\dagger(t)] = i\hbar \delta_{kk'} \delta_{\lambda\lambda'}
\tag{2.1}
\]\[
[q_{k\lambda}^\dagger(t), p_{k'\lambda'}(t)] = i\hbar \delta_{kk'} \delta_{\lambda\lambda'}
\tag{2.2}
\]

から p, q の運動方程式を導く。

\[
i\hbar \dot{q}_{k\lambda} = [q_{k\lambda}, H]
\tag{3.1}
\]\[
i\hbar \dot{p}_{k\lambda} = [p_{k\lambda}, H]
\tag{3.2}
\]

たとえば\[
[q_{k\lambda}, H] = \sum_{k'\lambda'} c^2 p_{k'\lambda'} [q_{k\lambda}, p^\dagger_{k'\lambda'} ]
= i\hbar c^2 p_{k\lambda}
\]などと計算することにより、

\[
\dot{q}_{k\lambda} = c^2 p_{k\lambda}
\tag{4.1}
\]\[
\dot{p}_{k\lambda} = - k^2 q_{k\lambda}
\tag{4.2}
\]

となる。これより、\[
\ddot{q}_{k\lambda} = -\omega^2 q_{k\lambda}
\tag{5}
\]という2階微分方程式が得られる。(ただし、$\omega = kc$ とおいた)

(注) [1] では、ωとおかずに kc のまま続けているが、何か理由があるんだろうか?
ここでは、ωと書いた方が分かりやすいので、ωで行くことにする。

この解は、

\[
q_{k\lambda}(t) = a_{k\lambda} e^{-i\omega t} + a'^\dagger_{k\lambda} e^{i\omega t}
\tag{6}
\]

と表せる。
ここで、a と a' は別物で、時間に依存しない。
便宜上、a' はエルミート共役で係数に入れている。
(4.1) 式を用いて、p は

\[
p_{k\lambda}(t) = -\frac{i\omega}{c^2} a_{k\lambda} e^{-i\omega t}
+ \frac{i\omega}{c^2} a'^\dagger_{k\lambda} e^{i\omega t}
\tag{7}
\]

と表せる。
(6)、(7) から a, a'+ について解くと\[
a_{k\lambda} = \frac{1}{2} \left( q_{k\lambda} + \frac{ic^2}{\omega} p_{k\lambda} \right) e^{i\omega t}
\tag{8.1}
\]\[
a'^\dagger_{k\lambda} = \frac{1}{2} \left( q_{k\lambda} - \frac{ic^2}{\omega} p_{k\lambda} \right) e^{-i\omega t}
\tag{8.2}
\]となり、エルミート共役は、\[
a^\dagger_{k\lambda} = \frac{1}{2} \left( q^\dagger_{k\lambda} - \frac{ic^2}{\omega} p^\dagger_{k\lambda} \right) e^{-i\omega t}
\tag{9.1}
\]\[
a'_{k\lambda} = \frac{1}{2} \left( q^\dagger_{k\lambda} + \frac{ic^2}{\omega} p^\dagger_{k\lambda} \right) e^{i\omega t}
\tag{9.2}
\]となる。
これより a, a' に関する交換関係を導く。たとえば、\[
[a_{k\lambda}, a^\dagger_{k'\lambda'}] = \frac{ic^2}{4} \left(
\frac{1}{\omega} [p_{k\lambda}, q^\dagger_{k'\lambda'}]
- \frac{1}{\omega'} [q_{k\lambda}, p^\dagger_{k'\lambda'}]
\right)
\]において、交換関係 (2) を用いればよく、以下のようになる。

\[
[a_{k\lambda}, a^\dagger_{k'\lambda'}] = \frac{\hbar c}{2k} \delta_{kk'} \delta_{\lambda\lambda'}
\tag{10.1}
\]\[
[a'_{k\lambda}, {a'}^\dagger_{k'\lambda'}] = \frac{\hbar c}{2k} \delta_{kk'} \delta_{\lambda\lambda'}
\tag{10.2}
\]

他の組み合わせについてはすべて可換。

参考文献
[1] シッフ 「量子力学」(下)
電磁場の量子化 | コメント(0) | 2015/12/06 22:49

電磁場の量子化 (8)

前回、導入した演算子 q, p を用いて、ハミルトニアンを書き表す。

ハミルトニアンは以下の通り。

\[
H = \frac{1}{2} \int \left[ c^2 {\bf P}^2 + (\nabla \times {\bf A})^2 \right] d^3r
\tag{1}
\]


A と P は演算子 q, p を用いて、以下のように表せる。

\[
{\bf A}(r,t) = \sum_{k\lambda} [ q_{k\lambda}(t) {\bf u}_{k\lambda}(r) + q_{k\lambda}^\dagger(t) {\bf u}_{k\lambda}^*(r) ]
\tag{2.1}
\]\[
{\bf P}(r,t) = \sum_{k\lambda} [ p_{k\lambda}(t) {\bf u}_{k\lambda}(r) + p_{k\lambda}^\dagger(t) {\bf u}_{k\lambda}^*(r) ]
\tag{2.2}
\]


これを (1) に代入していくわけであるが、
その前に、u や u* の積分を見ておく。

正規直交性を持つように定義していたので、\[
\int {\bf u}^*_{k\lambda} \cdot {\bf u}_{k'\lambda'} d^3r = \delta_{kk'} \delta_{\lambda\lambda'}
\tag{3}
\]
また、${\bf u}^*_{k\lambda} = {\bf u}_{-k\lambda}$ であるから、\[
\int {\bf u}_{k\lambda} \cdot {\bf u}_{k'\lambda'} d^3r
= \int {\bf u}^*_{k\lambda} \cdot {\bf u}^*_{k'\lambda'} d^3r
= \delta_{k,-k'} \delta_{\lambda\lambda'}
\tag{4}
\] であり、k の和は k 空間全体の半分で取るから、(4) の積分はすべてゼロになる。

(注) 波動的な電磁場のみを考えているから、k = 0 の成分はないと考えているのだと思う。

これを踏まえて、さらに、p と p+ が可換であることを考慮して、
$P^2$ の積分の項を計算すると、\[
\int {\bf P}^2 d^3r = 2 \sum_{k\lambda} p_{k\lambda} p^\dagger_{k\lambda}
\tag{5}
\]
次に、$\nabla\times{\bf A}$ の項を計算するには、
$(\nabla \times {\bf u}^*_{k\lambda}) \cdot (\nabla \times {\bf u}_{k'\lambda'})$ などの計算をしておく必要がある。\[
\nabla\times {\bf u}_{k\lambda}
= L^{-3/2} \nabla e^{ i {\bf k\cdot r}} \times \varepsilon_{k\lambda}
= i{\bf k} \times {\bf u}_{k\lambda}
\tag{6}
\]であり、${\bf u}^*_{k\lambda} = {\bf u}_{-k,\lambda}$ より、\[
\nabla\times {\bf u}^*_{k\lambda}
= -i{\bf k} \times {\bf u}^*_{k\lambda}
\tag{7} \]である。
ベクトル解析の公式\[
({\bf a}\times{\bf b})\cdot({\bf c}\times{\bf d})
= ({\bf a}\cdot{\bf c})({\bf b}\cdot{\bf d}) - ({\bf a}\cdot{\bf d})({\bf b}\cdot{\bf c})
\tag{8}
\]を用いると、\[
(\nabla\times{\bf u}^*)\cdot(\nabla\times{\bf u'})
= ({\bf k \cdot k'})({\bf u}^* \cdot {\bf u'}) - ({\bf k \cdot u'})({\bf k'} \cdot {\bf u}^*)
\tag{9}
\]となる。ただし、プライム記号は添え字が $k'\lambda'$ であることを示すこととする。
上記第一項は、空間積分すると、正規直交性 (3) と (4) より、\[
\int ({\bf k \cdot k'})({\bf u}^* \cdot {\bf u'}) d^3r
= k^2\delta_{kk'}\delta_{\lambda\lambda'}
\tag{9}
\]第二項については、\[
({\bf k \cdot u'})({\bf k'} \cdot {\bf u}^*)
= L^{-3} e^{i({\bf k}-{\bf k'})\cdot{\bf r}} ({\bf k} \cdot \varepsilon')({\bf k'}\cdot \varepsilon)
\tag{10}
\]として、exp 部分を空間積分すると、周期的境界条件より $\delta_{kk'}$ となり、
和を取ると、k = k' の部分しか残らない。
しかし、その場合は、k・ε = 0 であるから、結局、第二項の寄与はゼロとなる。

$(\nabla \times {\bf u})\cdot(\nabla \times {\bf u'})$ や$(\nabla \times {\bf u}^*)\cdot(\nabla \times {\bf u'}^*)$ の項については、
前述したとおり、$\delta_{k,-k'}$ となり、kの和を半空間で取っていることからゼロとなる。

以上より、ハミルトニアンは以下のように計算される。

\[
H = \sum_{k\lambda} \left[
c^2 p_{k\lambda} p^\dagger_{k\lambda} + k^2 q_{k\lambda} q^\dagger_{k\lambda}
\right]
\tag{11}
\]



・・・という式変形がシッフ [1] ではたった数行の言葉で書かれているだけなんですけど・・・(;д;)
(6) 以降の式変形は完全に我流です。

ちなみに、サクライ [2] では、(6) の置き換えを使わずに、
∇のまま、ガウスの定理を巧みに使って計算していてエレガントです。
サクライっぽい!(笑)


参考文献
[1] シッフ 「量子力学」(下)
[2] J. J. Sakurai "Advanced Quantum Mechanics"
電磁場の量子化 | コメント(0) | 2015/11/06 19:34

電磁場の量子化 (7)

下準備が長かったですが、ようやく佳境へ!

以前の記事で見たように、ここではクーロンゲージを仮定しているので、\[
\nabla\cdot {\bf A} = 0
\tag{1}
\]また、クーロン則(電荷なし)\[
\nabla\cdot{\bf P} = 0
\tag{2}
\]も自然に成立している。

そこで以下のような横波の平面波の基底を導入する。\[
{\bf u}_{k\lambda}(r) = L^{-3/2} {\bf \varepsilon}_{k\lambda} e^{i {\bf k}\cdot {\bf r}}
\tag{3}
\]ε(λ=1, 2) は2つの直交する偏光方向の単位ベクトル。
$\varepsilon_{k1}$, $\varepsilon_{k2}$, k が右手系をなすように取る。

また、周期的境界条件を仮定して、長さ L の箱で正規直交性を示すようにしておく。\[
\int {\bf u}_{k\lambda}^* \cdot {\bf u}_{k'\lambda'} d^3r = \delta_{kk'} \delta_{\lambda\lambda'}
\tag{4}
\]A および P を上記基底で展開する。

\[
{\bf A}(r,t) = \sum_{k\lambda}
[ q_{k\lambda}(t) {\bf u}_{k\lambda}(r) + q_{k\lambda}^\dagger(t) {\bf u}_{k\lambda}^*(r) ]
\tag{5.1}
\]\[
{\bf P}(r,t) = \sum_{k\lambda}
[ p_{k\lambda}(t) {\bf u}_{k\lambda}(r) + p_{k\lambda}^\dagger(t) {\bf u}_{k\lambda}^*(r) ]
\tag{5.2}
\]

$u_{k\lambda}^* = u_{-k\lambda}$であるから、k の和は k 空間の半分のみで行うこととして、
係数はA, P がエルミートになるように配慮している。

ここで、q と p の間の交換関係を以下のように決める。

\[
[q_{k\lambda}(t), p_{k'\lambda'}^\dagger(t)]
= i\hbar \delta_{kk'} \delta_{\lambda\lambda'}
\tag{6.1}
\]\[
[q_{k\lambda}^\dagger(t), p_{k'\lambda'}(t)]
= i\hbar \delta_{kk'} \delta_{\lambda\lambda'}
\tag{6.2}
\]


これ以外の組み合わせはすべて可換であるとする。
(6.2) は (6.1) のエルミート共役を取ると、自動的に成立。

このように決めると、以前に決めた A と P の交換関係

\[
[A_s, P'_{s'}] = i\hbar \delta_{ss'} \delta^3(r-r')
- \frac{i\hbar}{4\pi} \partial_{r_s} \partial_{r'_{s'}} \left( \frac{1}{|r-r'|} \right)
\tag{7}
\]

が導けることをこれから示していく。

明らかに、A 同士、 P 同士は可換。
A と P については、\[
[A_s, P'_{s'}] = \sum_{k\lambda} \sum_{k'\lambda'}
\left\{
[q_{k\lambda}, p_{k'\lambda'}^\dagger] u_{k\lambda,s} {u'}_{k'\lambda',s'}^*
+ [q_{k\lambda}^\dagger, p_{k',\lambda'}] u_{k\lambda,s}^* u'_{k'\lambda',s'}
\right\}
\tag{8}
\]P' や u' などのプライム記号は、座標 r' の関数であることを表す。
(6.1) と (6.2) を使うと、\[
[A_s, P'_{s'}] = i\hbar L^{-3} \sum_{k\lambda}
\varepsilon_{k\lambda,s} \varepsilon_{k\lambda,s'} \exp \{ i{\bf k} \cdot({\bf r-r'}) \}
\tag{9}
\]となる。
ただし、和は u と u* の項を合わせて、k 空間全体にわたって取るものとした。

便宜上、$\varepsilon_{k3} = {\bf k}/k$ を加えると、
λ=1,2,3 の ε は互いに直交するので、$(\varepsilon_{k1}, \varepsilon_{k2}, \varepsilon_{k3})$ は直交行列をなす。
これを転置したものも直交行列となるから、\[
\sum_{\lambda=1}^3 \varepsilon_{k\lambda,s} \varepsilon_{k\lambda,s'} = \delta_{ss'}
\tag{10}
\]となる。よって、λ=1, 2 に対する和は\[
\sum_{\lambda=1}^2 \varepsilon_{k\lambda,s} \varepsilon_{k\lambda,s'}
= \delta_{ss'} - \frac{k_s k_{s'}}{k^2}
\tag{11}
\]と表される。さらに、\[
k_s k_{s'} \exp\{i{\bf k}\cdot({\bf r-r'})\} = \partial_{r_s} \partial_{r'_{s'}} \exp\{i{\bf k}\cdot({\bf r-r'})\}
\tag{12}
\]および L → ∞ で\[
L^{-3} \sum_{k} \simeq (2\pi)^{-3} \int d^3k
\tag{13}
\]の関係を使って、(9)を計算すると、\[
[A_s, P'_{s'}] = i\hbar (2\pi)^{-3} \delta_{ss'} \int \exp\{ i{\bf k}\cdot({\bf r-r'}) \} d^3k \\
- i\hbar (2\pi)^{-3} \partial_{r_s} \partial_{r'_{s'}} \int \frac{1}{k^2} \exp\{ i{\bf k}\cdot({\bf r-r'}) \} d^3k
\tag{14}
\]
ここで、\[
(2\pi)^{-3} \int \exp\{ i{\bf k}\cdot({\bf r-r'}) \} d^3k = \delta^3({\bf r-r'})
\tag{15}
\]\[
(2\pi)^{-3} \int \frac{1}{k^2} \exp\{ i{\bf k}\cdot({\bf r-r'}) \} d^3k = \frac{1}{4\pi |{\bf r-r'}|}
\tag{16}
\]であるから、(7) の交換関係が得られる。

(15) は分かりますが、(16) はまだ確認していません。
後ほど、確認してみます。

参考文献
[1] シッフ 「量子力学」(下)
電磁場の量子化 | コメント(0) | 2015/10/14 19:20

電磁場の量子化 (6)

久しぶりに、電磁場の量子化の続き。

これまで、A と P を場の変数とみなして、
ハミルトニアンから正準量子化した運動方程式を導いて、
マックスウェル方程式に一致することを確認した。
そして、A と P の交換関係から、E と B の交換関係を導いた。

今度は、E と B を場の変数とみなして、
正準量子化した運動方程式を導いても、
やはりマックスウェル方程式を導くことができることを確認する。

E と B の交換関係

(1) 電場同士、磁場同士は可換。 $[E_x, E'_y] = [B_x, B'_y] = 0$ など。

(2) 電場と磁場の同成分同士は可換。 $[E_x, B'_x] = 0$ など。

(3) 電場と磁場の異なる成分同士は以下の交換関係。 \[
[E_x, B'_y] = ci\hbar \partial'_z \delta^3(r−r')
\tag{1}
\]他の成分は、サイクリックに添え字を替える。


ハミルトニアンは、

\[
H = \frac{1}{2} \int \left[ {\bf E}^2 + {\bf B}^2 \right] d^3r
\tag{2}
\]


これらの式から、量子化された運動方程式を導く。
たとえば、\[
i\hbar \dot{E_x} = [ E_x, H ]
= \frac{1}{2} \int \{ [E_x, {B'_y}^2] + [E_x, {B'_z}^2] \} d^3r'
\tag{3}
\]を計算する。まず、(1) を用いて、\[
[ E_x, {B'_y}^2] = 2ci\hbar B'_y \partial'_z \delta^3(r-r')
\]\[
[ E_x, {B'_z}^2] = -2ci\hbar B'_z \partial'_y \delta^3(r-r')
\] $B'_y$ や $B'_z$ とデルタ関数は交換できることを利用した。
さらに、部分積分を用いて、表面積分はゼロとすると、\[
[ E_x, {B'_y}^2] = -2ci\hbar \delta^3(r-r') \partial'_z B'_y
\]\[
[ E_x, {B'_z}^2] = 2ci\hbar \delta^3(r-r') \partial'_y B'_z
\]とすることができて、(3) の積分を行った結果は、\[
\dot{E_x} = c (\partial_y B_z - \partial_z B_y)
\tag{4}
\]となり、他の成分も同様であるから、マックスウェル方程式の一つ\[
\nabla \times {\bf B} = \frac{\dot{\bf E}}{c}
\tag{5}
\]が得られる。

同じように、、\[
i\hbar \dot{B_x} = [ B_x, H ]
= \frac{1}{2} \int \{ [B_x, {E'_y}^2] + [B_x, {E'_z}^2] \} d^3r'
\tag{6}
\]を計算すると、(3) と (E, B) が逆転しているだけだから、
符号が変わるだけで、マックスウェル方程式のもう一つ\[
\nabla \times {\bf E} = -\frac{\dot{\bf B}}{c}
\tag{7}
\]が得られる。

参考文献
[1] シッフ 「量子力学」(下)
電磁場の量子化 | コメント(0) | 2015/10/14 12:16

電磁場の量子化 (5)

次に、∇・E や ∇・B の E, B との交換関係を考える。

明らかに、∇・E は E と可換で、∇・B は B と可換

∇・E と B の交換関係を考える。\[
[\nabla\cdot{\bf E}, B'_x]
= \partial_y [E_y, B'_x] + \partial_z [E_z, B'_x]
\tag{1}
\]ここに、E と B の交換関係\[
[E_y, B'_x] = -ic\hbar \partial'_z \delta^3(r-r')
\tag{2}
\]\[
[E_z, B'_x] = ic\hbar \partial'_y \delta^3(r-r')
\tag{3}
\]を適用。さらに、\[
\partial'_z f(r-r') = -\partial_z f(r-r')
\tag{4}
\]等の性質を利用すると、上記 (1) の交換関係はゼロとなる。\[
[\nabla\cdot{\bf E}, B'_x] = 0
\tag{5}
\]同様に、E と B は交換関係において、対称だから、\[
[\nabla\cdot{\bf B}, E'_x] = 0
\tag{6}
\]
というわけで、∇・E や ∇・B は E, B いずれとも可換ということが分かる。

このことから、∇・E や ∇・B はハミルトニアン\[
H = \frac{1}{2} \int [ {\bf E}^2 + {\bf B}^2 ] d^3r
\tag{7}
\]とも可換である。

つまり、∇・E や ∇・B は運動の恒量であり、
初期条件でゼロにしておくと、常に、\[
\nabla\cdot{\bf E} = \nabla\cdot{\bf B} = 0
\tag{8}
\]が満たされる。

参考文献
[1] シッフ 「量子力学」(下)
電磁場の量子化 | コメント(0) | 2015/02/10 07:27

電磁場の量子化 (4)

修正した A と P の交換関係\[
[A_s, P'_{s'}]
= i\hbar \delta_{ss'} \delta^3(r-r')
- \frac{i\hbar}{4\pi} \partial_{r_s} \partial_{r'_{s'}} \left( \frac{1}{|r-r'|} \right)
\tag{1}
\]を用いて、電場 E と磁場 B の交換関係を導く。\[
{\bf E} = -c{\bf P}
\tag{2}
\]\[
{\bf B} = \nabla \times {\bf A}
\tag{3}
\]を用いて計算する。
まず、A の成分同士や P の成分同士は可換だから、
明らかに、E の成分同士、B の成分同士は可換である。

E と B の成分の間の交換関係を計算する。たとえば、\[
[E_x, B'_x]
= -c[ P_x, \partial'_y A'_z - \partial'_z A'_y ]
= -c \left\{ \partial'_y [ P_x, A'_z] - \partial'_z [ P_x, A'_y ] \right\}
\tag{4}
\]
交換関係 (1) を代入して、{ } の部分だけを係数省略して書くと、\[
(\partial'_y \partial_x \partial'_z - \partial'_z \partial_x \partial'_y)
\left( \frac{1}{R} \right) = 0
\tag{5}
\]となり、可換となる。(ここで、$R = |r-r'|$ と書いた)

次に、異なる軸の成分について計算すると、たとえば\[
[E_x, B'_y] = -c[P_x, \partial'_z A'_x - \partial'_x A'_z]
= -c\{ \partial'_z [P_x, A'_x] - \partial'_x [P_x, A'_z] \}
\tag{6}
\]交換関係 (1) を代入すると、(1) のうち、1/R の項は (5) と同様に消える。
デルタ関数の部分だけ残り、\[
[E_x, B'_y] = ic\hbar \partial'_z \delta^3(r-r')
\tag{7}
\]となる。

以上、電磁場の交換関係をまとめると・・・

(1) 電場同士、磁場同士は可換。 $[E_x, E'_y] = [B_x, B'_y] = 0$ など。

(2) 電場と磁場の同成分同士は可換。 $[E_x, B'_x] = 0$ など。

(3) 電場と磁場の異なる成分同士は以下の交換関係。\[
[E_x, B'_y] = ci\hbar \partial'_z \delta^3(r-r')
\]他の成分は、サイクリックに添え字を替える。

これで、前回懸念していたような、
物理的に観測される電磁場が光速を超えて相互作用することはないことが確認できた。

参考文献
[1] シッフ 「量子力学」(下)
電磁場の量子化 | コメント(0) | 2015/02/09 19:34

電磁場の量子化 (3)

ここまでを整理しておくと・・・
ハミルトニアンから量子論的な運動方程式を立てることによって、
マックスウェル方程式\[
\dot{\bf A} = c^2 {\bf P}
\tag{1}
\]\[
\dot{\bf P} = -\nabla \times \nabla \times {\bf A}
\tag{2}
\]が導かれる。
電磁場 E, B による表記に書き直すと、(1) は、\[
{\bf P} = -\frac{\bf E}{c}
\tag{3}
\]となり、E と P の関係式を表す(力学で言うところの ${\bf P} = m\dot{\bf x}$ みたいなものか)。
これを用いると、(2) は、\[
\nabla \times {\bf B} + \frac{1}{c} \dot{\bf E} = 0
\tag{4}
\]と表され、マックスウェルの一つ(変位電流)となっている。

マックスウェルの残りのうち2つ(単磁荷の不存在と電磁誘導)は、
電磁ポテンシャル表現によって、自動的に成立するから、
残りは一つ(クーロン則)。\[
\nabla \cdot {\bf P} = 0
\tag{5}
\](2) から、\[
\frac{\partial}{\partial t} \nabla\cdot{\bf P} = 0
\tag{6}
\]となるから、初期条件として (5) が満たされれば、常に満たされることになる。

以上が前回までのあらすじ。
ここからが少々めんどくさそうな話・・・汗

(1) より、\[
\frac{\partial}{\partial t} \nabla\cdot{\bf A} = c^2 \nabla\cdot{\bf P} = 0
\tag{7}
\]であるから、初期条件としてクーロンゲージ \[
\nabla \cdot {\bf A} = 0
\tag{8}
\] を選んでおくと、常にこの条件が満たされる。

ここで、以下の交換関係を考えると、条件 (5) より\[
[ A_x, \nabla' \cdot {\bf P}' ] = 0
\tag{9}
\]である。

ところが、正準交換関係\[
[A_x, P'_x ] = i\hbar \delta^3(r-r')
\tag{10}
\]からは、\[
[A_x, \nabla' \cdot {\bf P}'] = \partial'_x [A_x, P'_x] = i\hbar \partial'_x \delta^3(r-r')
\tag{11}
\]とならなければならない。

交換関係 $[ \nabla\cdot{\bf A}, P'_x]$ に (8) の条件を用いても、同様のことが生じる。

つまり、正準交換関係 (10) と補助条件 (5)、(8) は両立しえない。

これを回避するには、正準交換関係に以下のような修正を行えばよい。\[
[A_s, P'_{s'}] = i\hbar \delta_{ss'} \delta^3(r-r')
- \frac{i\hbar}{4\pi} \partial_{r_s} \partial_{r'_{s'}} \left( \frac{1}{|r-r'|} \right)
\tag{12}
\]ちょっと分かりにくいので、個別に例を書いておこうと思う。\[
[A_x, P'_x] = i\hbar \delta^3(r-r')
- \frac{i\hbar}{4\pi} \partial_{x} \partial'_{x} \left( \frac{1}{|r-r'|} \right)
\tag{13}
\]\[
[A_x, P'_y] = - \frac{i\hbar}{4\pi} \partial_{x} \partial'_{y} \left( \frac{1}{|r-r'|} \right)
\tag{14}
\]などのようになる。
この場合において、(11) の交換関係を再度計算すると、\[
[ A_x, \nabla'\cdot {\bf P}' ]
= \partial'_x [A_x, P'_x] + \partial'_y [A_x, P'_y] + \partial'_z [A_x, P'_z]
\tag{15}
\]これに、上記を代入すると、\[
[ A_x, \nabla'\cdot {\bf P}' ]
= i\hbar \partial'_x \delta^3(r-r') - \frac{i\hbar}{4\pi} \partial_x {\nabla'}^2 \left( \frac{1}{|r-r'|} \right)
\tag{16}
\]ここで、デルタ関数の公式\[
\nabla^2 \frac{1}{r} = -4\pi \delta^3 ({\bf r})
\tag{17}
\]を用いて、さらに、\[
\partial'_x f(r-r') = -\partial_x f(r-r')
\tag{18}
\]に注意すると、交換関係 (16) は、\[
[ A_x, \nabla'\cdot {\bf P}' ] = 0
\tag{19}
\]となる。
というわけで、今度は補助条件 (5) と整合性の取れた結果が得られる。
補助条件 (8) についても同様。

最後に気になることは、(12) の追加項によって、
同時刻に有限距離離れた地点間の相互作用が起きるように見えて、
相対論に矛盾するように見えること。

しかし、これはポテンシャルの間であって、
物理的に観測される電磁場の間で相互作用が起きなければよい。

それは、今後、電磁場の交換関係を導いて、確認することにします。

参考文献
[1] シッフ 「量子力学」(下)
電磁場の量子化 | コメント(0) | 2015/02/05 12:28

電磁場の量子化 (2)

$P_x$ についても同様に量子論的な運動方程式を立てる。\[
i\hbar \dot{P_x} = [P_x, H]
\tag{1}
\]ハミルトニアンを再掲すると、\[
H = \frac{1}{2} \int \left[ c^2 {\bf P}^2 + (\nabla \times {\bf A})^2 \right] d^3r
\tag{2}
\]だから、\[
i\hbar \dot{P_x} = \frac{1}{2} \int [P_x, (\nabla' \times {\bf A'})^2 ] d^3r'
\tag{3}
\]今度は交換関係の計算がちょっとめんどくさそうだが、とりあえず、回転の部分を書き下す。
\[
\begin{array}{l} (\nabla \times {\bf A})^2 \\ = (\partial_y A_z - \partial_z A_y)^2 + (\partial_z A_x - \partial_x A_z)^2 + (\partial_x A_y - \partial_y A_x)^2 \end{array}
\tag{4}
\]
ここで、今回は $\partial_x$ や $A_x$ などがすべて演算子だから、
これを普通に展開しちゃって大丈夫か?

と悩んでしまったのですが、考えてみたら、
$A_x$ などは物理量の場としてのハイゼンベルク的な演算子で、
$\partial_x$ などは場の空間依存性に対して作用しているだけの演算子だから、
まったく意味が異なるんですね。

何を言ってるかというと、$(\partial_x A_y)(\partial_y A_x)$みたいな演算で、
一個目の偏微分が2個目の括弧まで作用したりしないのかと心配したわけなのですが、
そこは気にする必要はなさそう。
というわけで、上記の例は、$A_x$ と $A_y$ さえ可換であれば、2つの括弧は可換である。

以上を踏まえて・・・
$P_x$ と非可換なのは、$A_x$ だけだから、(4) のうち、関係する項は、\[
(\partial_z A_x)^2 \\ -2(\partial_z A_x)(\partial_x A_z)\\ (\partial_y A_x)^2\\ -2(\partial_y A_x)(\partial_x A_y)
\tag{5}
\]

一番目のものと $P_x$ の交換関係を考えると、\[
[P_x, (\partial'_z A'_x)^2] = (\partial'_z A'_x)[P_x, \partial'_z A'_x] + [P_x, \partial'_z A'_x](\partial'_z A'_x)
\tag{6}
\]そして、\[
[P_x, \partial'_z A'_x] = \partial'_z [P_x, A'_x] = -i\hbar \partial'_z \delta^3(r-r')
\tag{7}
\]

ここで、かなり持ち時間を消費してしまいましたが、
実はこの後の計算が分からなくて、ずっと悩んでました^^;
掲示板で質問して、ようやく理解できました。
というわけで、残り一手30秒以内で頑張ります(笑)

(7) を (6) に入れると、\[
[P_x, (\partial'_z A'_x)^2] = -2i\hbar (\partial'_z \delta^3(r-r')) (\partial'_z A'_x)
\tag{8}
\]同様に、\[
[P_x, (\partial'_y A'_x)^2] = -2i\hbar (\partial'_y \delta^3(r-r')) (\partial'_y A'_x)
\tag{9}
\]クロスタームの方は $A_x$ に関係ない因子を外に出すだけだから、\[
[P_x, -2(\partial'_z A'_x)(\partial'_x A'_z)] = 2i\hbar (\partial'_z \delta^3(r-r')) (\partial'_x A'_z)
\tag{10}
\]\[
[P_x, -2(\partial'_y A'_x)(\partial'_x A'_y)] = 2i\hbar (\partial'_y \delta^3(r-r')) (\partial'_x A'_y)
\tag{11}
\]
これらを全部足し合わせると、\[
[P_x, (\nabla' \times {\bf A}')^2]
= 2i\hbar \left[ (\nabla' \delta^3) \cdot (\partial'_x {\bf A}') - (\nabla' \delta^3) \cdot (\nabla' A'_x) \right]
\tag{12}
\]とまとめることができる。

ここからどうすればよいのか分からなかったのですが、
部分積分(グリーンの定理)を使うんですね。

たとえば、第一項については、\[
(\nabla' \delta^3) (\partial'_x {\bf A}')
= \nabla' \cdot (\delta^3 \partial'_x {\bf A}' ) - \delta^3 (\nabla' \cdot \partial'_x {\bf A}')
\tag{13}
\]を用いて、さらにこの右辺第一項は積分するとガウスの定理より表面積分に変わる。
デルタ関数は無限遠でゼロであるから表面積分は消えて、
結局、(12) の第一項の空間積分は、\[
-2i\hbar \int \delta^3 (\nabla' \cdot \partial'_x {\bf A}') d^3r'
\tag{14}
\]となり、\[
-2i\hbar \nabla \cdot \partial_x {\bf A}
\tag{15}
\]となる。さらに、微分を入れ替えて、\[
-2i\hbar \partial_x (\nabla \cdot {\bf A})
\tag{16}
\]
第二項についても、全く同様に積分を行うと、\[
2i\hbar \nabla^2 A_x
\tag{17}
\]となる。これらを (12) に代入して、ベクトル解析の公式\[
\nabla \times \nabla \times {\bf A} = \nabla (\nabla \cdot {\bf A}) - \nabla^2 {\bf A}
\tag{18}
\]を用いると、(3) の運動方程式は、\[
\dot{\bf P} = - \nabla \times \nabla \times {\bf A}
\tag{19}
\]となり、マックスウェル方程式のもう一つの式に一致する。

というわけで、
ハミルトニアンから出発して、古典論的な運動方程式と量子論的な運動方程式の
いずれからも、マックスウェル方程式が導かれる
ことが分かった。

参考文献
[1] シッフ 「量子力学」(下)
[2] 井上 健 監修、三枝 寿勝・瀬藤 憲昭 著 「量子力学演習(シッフの問題解説)」
電磁場の量子化 | コメント(0) | 2015/01/07 00:17
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